小学校の教科担任制

来年度から始まる教科担任制

 令和4年度(2022年)より、全国の公立小学校の高学年に対し、教科担任制が導入されることが決まりました。
 教科担任制というのは、中学や高校のように、それぞれの科目ごとに専門の教師が指導する制度です。今まで小学校では、音楽や図工など限られた科目において、担任ではない専門の先生が指導することがあったと思いますが、教科担任制では、このような科目が増えることになります。具体的には、5・6年生において、「外国語」「理科」「算数」「体育」の4教科を優先的に専科指導の対象に加える(7月21日文部科学省)とのことです。
 小学校での教科担任制に関しては、実は1960年頃からその必要性を指摘する声があったのですが、様々な問題により、なかなか前進しませんでした。その後、学力低下への懸念が高まった2002年に223校、翌年には計492校の小学校がモデル校として教科担任制を開始し、今日に至ります。
 それらモデル校での先行導入で明らかになった教科担任制のメリットや課題点などをご紹介します。

教科担任制に期待される効果と成果

①教員の指導力・児童の学力向上
 まず初めに教科担任制により期待される効果は、専門の教科を持つことによる教員の指導力を強化、それに伴う児童の学力向上です。
 先行導入された学校の教師からは、「特定の教科を指導することで、専門性を高めることができる」「複数のクラスで授業をすることにより、指導の工夫を日常的に行うことができる」といった声が挙がっているそうです。

②働き方改革
 次に、教科担任制の基、空き時間の創出や担当教科を減らすことで日々の負担が軽減されることが期待されています。
 現場の教師からは、「教材研究や教材準備をする科目数が減ったので、担当教科の準備に専念できた」「時間的なゆとりが生まれ、児童と向き合う時間が増えた」と、好意的に受け入れられているようです。

③多面的な児童指導と理解
 教科担任制により複数の教員が多くの児童と関わることで、個々の児童をより多面的に理解できると期待されています。いろいろな先生に声をかけられ、励ましてもらえる機会が増えることは、児童にとってもメリットであると言えるでしょう。

④中1ギャップの解消
 中学へ進むと、完全教科担任制に変わり、学習内容も難しくなるなど、さまざまな変化に戸惑う「中1ギャップ」という問題があります。この変化に順応すべく、小学校の高学年より段階的に教科担任制に触れることは、少しずつ児童が新しい学習形態に慣れることが期待されています。

教科担任制の課題と対策

①時間割調整の複雑さ
 教科担任制を各学校の実態に合わせ時間割を調整することは、とても大変です。いくつかの学校では時間割の調整が有効にできず、教科担任制にした直後は余計負担になってしまったと振り返っています。

②教員不足・免許制度
 次に、教科担任制を実現するには教員不足という課題があります。また、中学校の免許では原則小学校で教えることができないため、中学の専門免許を持っている教員人材を小学校の専科教員として積極的に採用できないという壁もあります。この人材不足の課題に対応すべく、教員養成、そして免許制度の見直しは急務といえます。

③児童の様子・学習の把握
 担当学級の児童と過ごす時間が減ることに不安感を抱く教員は多く、子どもたちの学習や日々の様子を把握することは課題とされています。実際に、教科担任制を導入1年目の家庭訪問において保護者からの児童についての質問に答えられないこともあったといいます。また、低学力の児童の学習状況の把握が難しくなるという見解もあります。

④学習ルールの確立
 児童たちは、複数の教師の指導を受けることにすぐ慣れることができるとの報告が多い一方で、教科を超えた授業スタイルがあまりに異なると児童を困惑させてしまうと懸念されています。そのため、学習や授業規律・ノートの書き方・宿題の出し方などの基盤となるルールを教師間で共通理解し、実践することが重要です。